互いに目の前に居る相手に好意を持ち始めている事を自覚してから

数日が過ぎたある日…











その日は冬島だというのに天気も良く、

暖かな日差しが窓から差し込んでいた。














はエースをベッドの縁に座らせ、

傷口を消毒しながら話しかける。










「怪我もだいぶ良くなってきたみたいだね…で?

声は出るようになったのか?」



「……………」








エースはパクパクと口を動かして見せるが

まだ声は聞こえてこない… 






「 駄目か…おっかしいなぁ〜?

熱が下がったら声も出るようになるって言ってたのに…

高い治療費ぶん取ったくせにヤブ医者だったのか?」






のブツブツ言っている姿を見て 声もなく笑うエース… 





「いや…笑ってる場合じゃないだろ?このままずっと声が出なかったらどうする気だよ…」



――─ ん? そうか…ま、別に喋れなくたって問題ねぇけどな。 ――─ 








特に困った素振りを見せる訳でもなく、ニッと笑うエースに

半ば呆れた顔をして見つめる








「はぁ〜…能天気なヤツだね、まったく…。」








溜め息を吐きながらエースを見つめ苦笑いを浮かべる

その時 ふと、ある事に気付いた… 











( そういや、今まで思いもしなかったんだけど……)
















( もしかしてコイツの帰りを待ってる女とか……何処かに居るのかな?)













出会って数日 誰かに連絡を取る様子も無ければ

焦った様子も見せないエースに、そんな事は考えもしなかっただったが


エースに対する想いを自覚した今

色々と自分の知らない事を知りたいと思い始めた…








( 聞いてみようかな…でも、急にそんな事を聞いたら変に思われるかな?)


――― ……ん? 急に静かになったな……どうしたんだ? ―――








エースを見つめたまま、物思いに耽った様子で動かなくなった



そんなの様子に気付いたエースが

の目の前でヒラヒラと手を振ってみせると

その手の動きに反応するかのようにの視線がエースに移る











( やっぱり………聞いてみよう。 )










惚れた相手の事を知りたいと思うのは当然の事だろう…

ましてや その相手に先約が居たりなどすれば、後々 辛い思いをするだけなのだから……










「 アンタが帰って来なくて心配してる人とか……居ないの?」







ドキドキと高鳴っていく鼓動に、胸が押し潰されそうになる…

そんな胸の内をエースに悟られないように…と、気を張る







――─ …んあ? ガキじゃあるまいし… ――─ 







の問いにエースが応えるのに掛かった時間は ものの数秒…

しかしにとっては とても長く感じられた







「……そっか。」
( 良かった…でも……)







笑ったまま首を振ったエースに、内心 凄くホッとしただったが

それでも心の奥底からジワジワと溢れ出してくる不安は拭い切れない…













( いつまでも一緒に居られるって訳じゃないんだよね…… )















( コイツだって待ってる人は居なくても、帰る場所はあるんだろうし……)


――― ?? ―――





ジッと自分を見つめながら まだ考え事をしているにニッと笑いかけてみるエース

その笑顔につられ思わず笑い返す









「 つられて笑っちゃったじゃん…意味無く笑うなよ、変なヤツ… 」









照れ臭くなり、思わずエースの額を突付くと

新しい包帯を取りに立ち上がった








――― んだよ、変だったのはお前の方だろ… ―――







何を考え込んでいたのかは判らないが

いつものに戻り、少し安心したエース…








( そうだ……先の事をグダグダ考えてたってしょうがない。 )








きっと怪我が治れば自分の帰るべき場所に帰るのであろう

いつか離れ離れになるのだと思うと心臓を鷲掴みにされたように苦しくなる…





それでも、例え理由がどうであれ 今は一緒に居るのだから…








「 大丈夫vv…怪我が治るまでは、アタシがちゃんと面倒みてやっからねvv 」







胸を占める息苦しさを押し殺し 新しい包帯を巻きながら笑顔を向けた

そんなの言葉に、エースの顔から笑みが消える…










――─ ……怪我が治るまで…か。 ―――



「 …良しvv 終わりvv 」



――― て事は 怪我が治ったら別れるつもりなのかコイツ………… ―――



「 …どした? どっか痛いのか? 」








さっきまで見せていた笑顔が消えている…

あまつさえ眉間に皺まで刻んでいるエースに、何故か言いようの無い不安感に襲われる










――― ……そろそろ限界か…… ─―― 








心配そうに自分を見つめるの顔を ジッと見たまま微動だにしないエース…





 



「 ねぇ…本当に大丈夫? また熱でも出て来たんじゃ…ひゃぁっ!! 」








がエースに向け腕を伸ばすと その伸ばした腕を掴み

グイッと引き寄せ そのままベッドの上に押し倒すエース










「 な……何……? 」



――― …鈍すぎんだよコイツ。 ―――



( ちょ…ちょっと…どうしたの急に……?! )













時間をかければ自然と気付くかと思っていたのだが

先程のの台詞だと それも期待出来そうに無いと判断したエース


悪いとは思いつつも、強硬手段に出る事にした









――― いい加減、俺も男だって事 意識して貰わなきゃな…―――  









エースはの目を見つめ、その柔らかい頬に そっと手を触れると

親指の先で軽くの口唇をなぞった…


その行為に思わずビクッと身体を震わせる









エースの突然の行動に頭の中が混乱し始める…






たとえ自分が好意を寄せている相手であっても

この行為が自分だからなのか、誰でも良いからなのかも判らず

成り行きまかせでSEXをする気にはなれない。











「 ちょ…ちょっと待っ…… 」









キスをしようとしてきたエースの口に手のひらを押し当て

グイッと押し戻して身体を引き離すと

エースを見上げ、精一杯 強がってみせる









「 ……体力が回復してきたら今度は性欲? 」



――― ………あ? ―――



「 こう見えてもアタシ身持ち固いんだよね…誰でもイイってんなら他を当たってくんない?」 



――― ……っだよソレ!! ――― 









エースはの言葉にムッとして手を離した…

その隙に身体を起こし、逃げるようにベッドから飛び降りる








――― そーいう男に見えるって事かよ…ちぇっ…… ―――









眉間に深く皺を刻み、ベッドの縁にドカッと座り直したエース…









( とっさに悪態ついちゃったけど……もしかして本気だったのかな…? )










イライラした様子のエースに多少 思い直す








 ( でも…ただ単に アタシをからかって遊んだだけかもしれないし… ) 














マジマジとエースの顔を見つめながら考え込む


途中 エースと目線が重なったが

不機嫌そうに顔を逸らされ、罪悪感を感じてしまう…













「 ご…ゴメン……そんな顔して怒んないでよ…… 」













雰囲気の重苦しさに耐えかね、思わず謝る

それでも腹の虫が納まらないのか 見向きもしないエース











「 だ…だって……まさか 本気だなんて思わなかったんだもん… 」




――― 普段からヘラヘラしてるから悪いとでも言いたいのか ―――















ふてくされてベッドに横になると、に背中を向け目を閉じるエース

















( どうしよ〜……あんな事 言わなきゃよかった…… )













自分が発した軽はずみな言動にズキズキと胸が痛む…

機嫌を損ねたままのエースを見て さらに罪悪感が重く圧し掛かる…
















「 ねぇ〜……機嫌直してよ……どうしたら機嫌直してくれるのさ? 」









背中を向けて横になったエースの肩をグイッと引き、

自分の方を向かせると、上から顔を覗き込む










――― 仕方ねぇ……そろそろ許してやるか…… ―――






 困った顔をして自分を見つめているの腕を掴むと
ニッと口角を上げ、口唇にキスをしろという素振りを見せるエース。










「……しょうがないなぁ〜…くすっ…」








やっと機嫌を直してくれたエースにホッとする

寝転がったエースの横に手を付き、身を屈めると

チュッと触れるようなキスを落とす




下唇を甘噛みすると軽く吸いあげ

優しく撫でるように口唇をなぞった舌先が ユックリと割り入れられていく…





深く 激しく お互いの舌を絡めあう二人…

の腕を掴んだエースの腕に次第に力が込もっていく…








─── あ〜…くそ、我慢出来ねぇ!! ───











エースは口唇を重ねたまま、の身体をグイッと引き寄せると

身を翻し 上から覆い被さった。








口唇を離し、の耳たぶに軽く歯を立てるエース

ピクッと小さな反応を示すの身体…





エースの舌先がやんわりとの首筋を撫で

チュッと音を立てて軽く吸い上げると、小さな紅い跡が残った…







はクスクスと喉を鳴らすような笑い声を上げながら、

首筋に吸い付いているエースの頭を優しく抱く











「 ったく…傷口が開いても知らねぇぞ? 」









の言葉にエースは顔を上げ ニッと笑うと、

頬を撫で 口唇に軽くキスを落とす…











再び胸元に顔を埋め、行為を再開しようとした…














その時…… 















《 コンコン 》

















扉の外から軽くノックをする音が聞こえてきた。











「 …誰か来たみたい…残念。 」









小さく溜息を吐くと 起き上がろうとした


しかし、エースは お構いなしに無視して続けようとする…





「 ちょ…ちょっと待って……居るのはバレてんだから…居留守なんて出来ないって! 」





は慌ててエースを引き離し、制止する…




何とか起き上がり、眉間に皺を寄せて不機嫌そうにしているエースの頬に

軽くキスを落とすと 服装を直して扉を開けた。

















扉の外には宿屋の主人が困ったような顔をして立っていた… 











「 あの…どうかしたんですか? 」


「 いやね…お客さんを出せってロビーで騒いでる人がいてね… 」


「 …は? 」


「 知り合いだから部屋に案内しろとか言ってるんだが…

簡単に信用する訳にもいかないだろ? だから、コッソリ行って確認して来て貰おうかと思って… 」



「 知り合い? そんな人は居ないハズだけど………あ! 」









フッとの脳裏に ある男の姿が思い浮かんだ。







「 判りました。 心当たりが無い事もないんで……」







は宿屋の主人と一緒に そのまま部屋を出て行ってしまった。








─―― チェ…いいトコだったのに…ま、いいか。続きはまた後で… ――─ 





エースはベッドの上に寝転がると、扉の方に背を向け寝始めた…