空は快晴…


天候も良く、凪いでいる海上を

ユッタリと航海している豪華客船の上


綺麗な衣装を身に纏った紳士や淑女

幼い子供達は楽しそうに船上を駆け回っている…











はずだった。






今しがた海賊船に襲われるまでは…

































穏やかな海に突如現れた海賊船



その海賊旗に描かれた印は

海賊王ゴール・D・ロジャーと肩を並べるんじゃないかとまで恐れられた

エドワート・ニューゲート率いる「白ひげ海賊団」の旗印だった。






横付けされた船のマストから次々とロープが投げ下ろされ

何日風呂に入ってないのか、と聞きたくなるくらいの

薄汚れた衣裳をまとった海賊たちが客船の甲板に次々と飛び移ってくる…






海賊の襲撃に応戦する客船の船員を蹴散らし、

逃げ惑う女・子供を面白そうにあしらっている海賊達の姿…


先程までの優雅なひとときが180度一変し、

さながら地獄絵図を見ているかのような光景が船上に広がっている。

















「 酒と金品を奪ったらサッサと船に乗り込め!!
じきに無線を聞き付けた海軍がやってくるぞ!! 」






騒がしい船上を一段と通る声が響き渡る。



声の発せられた方向に目を向けると、

海賊たちの中でも一際体格の良い男が指示をしている姿が見えた。






「スイマセンねぇ…大人しくしててくだされば
命まで取りはしませんので…」





怯えて泣いている子供を抱えた母親に向かって、

仲間達に対するものとは全く違う丁寧な口調で話し掛ける男…




筋肉質なその引き締まった身体を誇示するかのように、

上半身は衣服を身に付けず裸のまま…

背中には海賊旗と同じデザインの刺青がデカデカと彫り込まれている。





その男の正体は、白髭海賊団の中で最近、

二番隊隊長を任せられる事になったポートガス・D・エースであった。


















( あー……かったりぃ…… )






船上では自分の指揮で略奪行為が行なわれているというのに、

半ばうわの空状態で部下の様子を見回すエース…






( こーいうのは、あんま好きじゃねぇんだよな……
まぁ、俺らも食いぶち稼がなきゃなんねぇから仕方ねぇんだけど… )







( だいたい今はンな事やってる暇もネェんだ……
早くアイツを探さねぇと……… )






奪い取った金品や酒樽を忙しなく運ぶ仲間達の様子を見ながらも、

何やら物思いに耽った様子のエース……



その時、ふと視線を向けた先で、

派手な物音と共に空樽に叩きつけられる乗客の姿が見えた。








「 ………ったく、しょうがねぇな。 」






溜息を吐き、部下のもとへと近づいていくエース…






「 何してんだ…抵抗してんのか? 」

「 あ、隊長……いや、コイツが身に付けてるモンが高価そうなんで
頂戴しようとしたら、イキナリ蹴り入れて来やがって…」

「なるべく手荒にすんじゃねぇよ…ったく、
あんたも大人しくしてりゃ痛ェ目に遭わなくて済むんだからよ…」





うつ伏せに倒れていた乗客がゆっくりと上半身を起こすと、

チャリッと高い金属音を立て、ネックレスが揺れ動く…



その金属音に視線を向けると、

突き飛ばされた時にボタンが数個弾けたのか

肌蹴たシャツの間から一目で女だと判る膨らんだ胸元が見えた。









「 あんた…女か?! 」






慌ててその女を立ち上がらせようとエースが近づき手を差し伸べると、

その手を勢いよく叩き落とし、自ら立ち上がった女が身を翻してエースに蹴り込んだ…

が、意図も簡単に避けられてしまい、勢い余って再び転倒する。










「 …いったぁ〜… 」

「 …イキナリ蹴り込むたぁ何て女だ。もうちょっと女らしくしろよ。」

「 うるさい!! 海賊なんかに説教される謂われはねぇ!! 」

「 …………あ。」







罵声を吐き、自分を睨みつけてきた女の顔を見てエースの動きが止まる。






「 ………?? 何だよ…ジロジロと人の顔見てんじゃねぇよ。」

「 お前………もしかして………」

「 誰がお前だ!! アタシにゃって名前があんだよ!! 」

「 そうか……って名前だったのか。探したんだぜ、なぁ、… 」







さっきまでの退屈極まりないといった表情は何処へやら…

急に嬉しそうな顔をしてに話し掛けるエース。



しかしにはエースの事など見覚えがないらしく、

訝しげな表情でエースを睨み付け、


「 馴れ馴れしく人を呼び捨てにしてんじゃねぇ!! 」


と、手元に転がっていた板キレを拾い、エースに向かって殴りかかった。





「 っと、危ね…… 」

「 ……っ!!…… 」

「 ……しまった!! 」




エースは いとも簡単にヒョイと避けると、

とっさにの頚椎に手刀を落としてしまう。





「 やべぇ……いつもの癖で つい… 」




脳震盪を起こしたは意識を失い、その場に倒れ込んでしまった…




















エースは倒れているの横にしゃがみ込むと
再度 確認するため顔を覗き込んだ。






「 ………………。」

「 その首飾り…結構な年代モンっすよね?
そいつが気ィ失ってる内に、ソレだけ拝借して引き上げましょうぜ! 」






先程の男がエースに耳打ちをする…が、
の顔をマジマジと見つめていたエースが淡々と答える。





「 …いや…俺ァコイツに用があんだ……このままコイツも連れて行く。」

「 …はぁ?? その女の事だから目ェ覚ましたらまた暴れ出すんじゃねぇっすか?」

「 そん時ァそん時だ…ま、 何とでもなるさ。」




エースは意識を失ったままのを肩に担ぎ上げると、

大きな声で船上に残って居る部下達に向かって叫んだ。









「 よし! 引き上げるぞ!! 」







エースの指示に従い、船上に残っていた海賊たちが

横付けされていた船に次々と飛び移る。




やがて客船を襲った海賊船は水平線の彼方に消えて行った…