新しく上陸した街で、各々予定もあり
ゴーイングメリー号のクルー達はバラバラに行動する事になった。
特に予定の無かったゾロは船上で居眠りをしていたのだが、
夜になり、さすがに腹が減って目が覚めた。

「腹減ったな…飯屋は何処にあるんだ??」

と、街中をブラブラしながら店を捜しているゾロの後ろから
男女が言い争っている声が聞こえてきた。


「いや! 離して!!」

「一体、僕の何処がいけないって言うんだ…
気に入らないトコがあったら直すから!!」

「もう! 貴方のそういう女々しい所が大嫌いなのっ!! いい加減にしてよ!!」

「待ってよ! ちゃん!!」



(…?…まさか…な。)

男が発した『  』という名前に思わずゾロが立ち止まる。


寂れた街の酒場で出会い、肌を重ねたと言う名の女…
次の日ゾロが目覚めると、彼女は部屋から姿を消していた。

彼女にとっては一夜限りのお遊びだったのだろうと、
そのまま街を出てから、はや数ヶ月の月日が経っていた…
しかし、今でも色鮮やかに彼女の面影を思い出す事が出来るのは何故なのか…
色恋沙汰に縁のなかったゾロには、その理由など判るはずもない。

だが、あれから何処の街へ行っても、
似たような風体の女とすれ違う度に、その女の顔を見るようになった。


(偶然辿り着いた街で、偶然再会…なんて都合のイイ話があるわきゃねぇよな…)


ゾロが苦笑いを浮かべながら再び歩き出すと、
突然、後方がザワザワと騒がしくなった。
どうやら男が刃物を取り出して振り回し始めたらしい。


「僕のモノにならないと言うのなら…君を殺して僕も死ぬ!!」

「じょ…冗談でしょっ?!」

(おいおい、危ねぇ男だな…)


同名の女という事もあり、少し気になったゾロは
振り向いて、人々が騒いでいる方へと歩き出す…
すると、後ろの男を気にしながら走って来た女と衝突した。


「痛!! ご…ご免なさい!!」


ぶつかった勢いで転倒した女が慌てて顔を上げると、見覚えのある顔…
今しがたゾロが思い出していた女…だった。


?!」

「…ゾロ!!」

(おいおいマジかよ…)


ゾロは地べたにしゃがみ込んでビックリした顔をしている
手を差し伸べて立ち上がらせる。
すると後ろから息を切らせながら、一人の男が走って来た。


ちゃん!! 何だその男は…まさか、そいつが君の言ってた…」


は慌ててゾロの後ろに隠れる。


「そ…そうよ! 貴方なんかより彼の方がずっと素敵なんだから!!」

「テメェ!! 人を巻き込んでんじゃねぇ!!」


ゾロがの方を見ながら怒ると、
はゾロのシャツをギュッと掴み、小さな声で話す。


「ゴメン…あの人にしつこく付き纏われて困ってるの…お願い助けて…」

「…ったく…」


ゾロは大きな溜息をつくと男の方を振り向き、諭すように話しかける。


「あのなぁ…別にコイツじゃなくたって、女なんか他にいくらでもいるじゃねぇか…」

「ウルサイ!! 僕はちゃんを愛してるんだ!!」

「…刃物振り回しながら何言ってんだテメェは。」

「お…お前さえ居なくなれば…ちゃんは僕のモノに…」

「…あぁ?!」

「し…死ねぇ〜〜!!」


男がゾロに向かって刃物を振りかざしながら突っ込んで来る。
もちろん素人に易々と刺されるようなゾロではない。
素早く刀を鞘から引き抜くと、男が握っている刃物を峰で払い落とした。


「いい加減にしやがれ!! みっともねぇ事してんじゃねぇぞ!!」

「う゛…ちくしょう! 覚えてろよぉ〜〜〜!!!」


ゾロが凄んで睨みつけると、
マイナーな捨てゼリフを吐きながら、男は逃げて行った。


「ったく情けない男だな…何なんだありゃ…」


振り返ると、はホッとした表情でゾロに微笑みかける。


「ありがとうvv また助けて貰っちゃったわね。
お礼に奢ったげる!! 飲みに行こvv ねvv」

「…あのなぁ…」


は呆れた様子のゾロの腕を引っ張り、
近くにある酒場に入って行った。







再会を祝し、暫く二人で飲んでいたのだが、
酔っ払ったがゾロに絡み始めた。


「ゾロって賞金首なんですって??
…この前、その首取っとけば良かったわ。」


は、クスクスと笑いながら
ゾロの首筋を撫で、肩に寄りかかってきた。


「テメェ、飲みすぎなんじゃねぇのか!? もう止めとけよ。」

「いいじゃない…だって嬉しかったんだもん…」

「何がだよ。」

「うふふ…ゾロに会えたからvv」

「あぁ?? さっさと姿を消したくせに、調子のイイ事を…」

「違うわよぉ…起こしたのに全然起きそうになかったから…
チョッと出掛けた隙にゾロが居なくなってたんじゃないぃ…」

「…そうなのか?」

「そうよ!…あれからずっと…捜して…」

( …捜してた? 俺を?? 何で… )


口に出して聞いてみたい気もするが、
何だか気恥ずかしく、どう言えばイイのか判らない…

何となく会話も無くなり、黙々と酒だけが進む。
暫く沈黙が続いていたのだが、
さらに酔いの回ったが口を開いた。


「ん〜…何か…暑いぃ〜…」


突然、が羽織っていた上着を脱ぎ始めた。


肩口に掛かっていた髪がサラリと滑り落ち、滑らかな白い肌が露になる。 
目の前に居たバーテンがの身体を
嘗め回すような厭らしい目つきで見ている…

その視線に気付いたゾロがムッとして に上着を掛けバーテンを睨みつけると
バーテンはゾロの凶悪な顔に殺気を感じたのか、
慌てて店の奥に逃げるように入って行った。


「マジでもう止めとけ!! テメェ他の男が、どんな目で見てんのか判ってんのか!?」

「何でそんなに怒るのよぉ〜…暑いんだから服を掛けないでよぉ〜…」


掛けられた服をまた投げ捨て、
が片肘を付いてグラスに手を伸ばすと
その様子を見ていたゾロが、
横から取り上げ一気に飲み干してしまった。


「あぁ〜〜〜っ!! 私のお酒ぇ〜…何でゾロが飲むのよぉ〜…」

「テメェはもう飲むな!! 送ってやるから立てよ!!」

「う゛……立てないぃ…」

「あ゛〜もう!! 世話の焼ける女だな!!」


ゾロは酔ってフラフラのを抱き上げると酒場を出た。
はゾロの首に腕を回し、肩の上に頭を乗せると
気持ち良さそうに、そのまま眠ってしまった。


「おい! こら! 寝るんじゃねぇ!!…クソっ!!」

ゾロがの身体を揺すっても起きる素振りが無い。
何処へ連れて行けばいいのかも判らない…が、
何となく離れがたいという思いもあり、
とりあえず船に連れて帰る事にした。






〜 to be continued 〜