切り立った崖の傍に隠すように停泊している船がある。

麦わら帽子を被ったドクロマークの帆に羊の船首…
ご存知の通り、ゴーイングメリー号である。




甲板では、街から帰って来たクルー達が
買い出しした荷物を片付けている。



「いやぁ〜〜っはっはっは! 楽しかったなぁ〜〜〜!!!」

「おいルフィ! テメェも、ちったぁ荷物運ぶの手伝ったらどうだ!!」

「そうだぞルフィ! まだ下にも荷物は、いっぱいあるんだぜ!!」

「おぉ〜〜! 頑張れよぉ〜! ウソップゥ〜〜〜!! じゃぁなぁ〜〜〜!!!」



ニカッと笑うと元気良く船首の方へ走り去って行くルフィ。



「ふざけんなルフィ!! 何で俺ばっか運ばなきゃなんねぇんだよ!!
 あぁー!! ”これ以上荷物を運んだら死んでしまう病”が…」

「んな病気があるか!! ウダウダ言ってねぇで、さっさと下に行って荷物持って来い。
 あ、食材はレディを扱うように丁寧に扱えよ? 落としたりしやがったら蹴り飛ばすぞ?」

「わ…判ったよ…運べばイイんだろ運べば…ちくしょぉ〜〜〜!!」



サンジに軽くあしらわれ、肩を落としながら
岩場に残っている荷物を取りに船を降りていくウソップ…


両肩に荷物を担いでラウンジへと向かうサンジの方へ、
チョッパーがチョコチョコ走り寄って来た。



「なぁなぁ、ゾロは? 昨日、宿屋に帰って来なかったぞ?」

「あぁ?…そう言やぁゾロが居ねぇな…ま〜た迷子になってんのか??
チョッパーちょっと部屋行って、帰って来てるか見て来てくれよ。」

「うん、判った!」



チョッパーはマストの下にある入り口を開けようと、
ガタガタと動かしてみるが開かない。



「…あれぇ…おかしいなぁ〜? 開かないぞ〜〜??」



一生懸命ガタガタやっている所に、
荷物を運び終えたウソップがやってきた。


「何してんだチョッパー、俺様が開けてやるよ。
 ちょっとどいてろ……よっと!」



ガタンと物音をたて、床板が外れた。



「おぉ〜!! スゲェなウソップ!!」

「おぅよ! コツさえ掴めば一発で開くんだ…で? 部屋に入るのか?」

「いや…ゾロが帰ってるか見ようと思って…」

「そういや、宿屋に帰って来なかったからな…居るならまだ寝てんじゃねぇのか?」



ウソップはそのまま男部屋を覗き込んだ後、
ゆっくり顔を上げて床板をはめ直した



「な…何だよウソップ、何で閉めるんだよ。ゾロは居たのか?」

「お…おう! 居た居た!! そ…そういやチョッパー、さっきルフィが呼んでたぞ?」

「え? そうなのか? なんだろ?? 行ってくる!!」



船首の方へ走り去って行くチョッパーを見て、ホッと胸を撫で下ろすウソップ。
そこへ買い物した荷物を部屋に置いて、甲板に出てきたナミが寄ってくる。



「…そんなトコで何してんの? ウソップ…」

「あっ…ナミ…た…大変なんだ! ゾ…ゾロが…」

「…何よ……何がそんなに大変なのよ??」

「口で説明するより、見た方が早ぇよ!」



ウソップは先程と違い、物音がしないように慎重に床板を外すと
ナミに、下を見ろと言っているようなジェスチャーをして見せる。



「何なのよ、もう…」



ナミが男部屋を覗き込んでみると、
明かりの付いてない薄暗い男部屋の絨毯の上で、
裸に薄い毛布一枚被って大の字になって寝ているゾロの姿が見える。



「何よ…ゾロが寝てるだけじゃない。何が大変なのよ…?」

「バカ! 良く見てみろよ…ゾロとソファの間!!」



ウソップに言われ、再び目を凝らして良〜く見てみると
ゾロが伸ばした腕の上に小さな黒い塊が見えた…



「…?!」



ナミはゾロに寄り添うように
ピッタリとくっ付いて寝ているの姿を見つける。



「…あら大変。」

「…んっ……」



小さく篭った声を上げ、の身体がピクリと動き少し離れる…
それに反応してか、寝ているゾロの腕が動き
を胸元に引き寄せ、再びイビキを掻き始める…

慌てて顔を上げ、静かに床板を元に戻すと、ウソップと見つめ合うナミ。



「…どうすんの? アレ…」

「んな事、俺に聞くなよ!」

「もうすぐ出航なんだけど…ウソップあんた起こして来なさいよ。」

「えぇっ!! 俺が?! アイツ寝起き超最悪なんだぞ? ナミが起こしに行って来いよ!!」

「イヤよ! もし毛布の下が二人とも全裸だったらどうすんのよ!!
ゾロの全裸なんて見たくないわよ私!!」

「お…俺だって女の方の裸を見ちまったら、ゾロに斬られるからイヤだ!!」



ウソップとナミが言い合いをしていると、
船首の方からルフィの叫ぶ声が聞こえてきた…



「ナミィ〜〜!! ゾロ居るんだろぉ〜〜?? 出航してもイイかぁ〜〜〜???」



少し考えてから、楽しそうな声で返事をするナミ。



「……イイわよぉ〜〜〜〜vv」

「お…おい、ナミ! い…イイのか? 本当に…」

「仕方ないじゃないvv アンタ起こしに行くのイヤなんでしょ?」

「そ…そりゃそうだが…ゾロに何も言わずに船出したら、後で絶対に怒るぞ?」

「イイのよぉ〜…あんな格好で寝てるアイツが悪いんだからvv」


何か考え込んではクスクスと小悪魔のような笑みを浮かべ、その場を立ち去っていくナミ。


「ありゃぁ、絶対に良からぬ事を考えてるな…知らねぇぞ…俺…」










【 …小一時間程経った頃… 】





日も高くなってきて、男部屋の中が少し蒸し暑くなってきた。
素肌に薄っすらと汗をかき、気持ち悪さで目を覚ましたの目の前にはゾロの寝顔…
起きている時のような小難しそうな顔ではなく、
気を抜いた穏やかな寝顔に、の顔から思わず笑みが零れる。


「ふふ…可愛い寝顔vv」


はゾロの頬に軽くキスを落とし、起こさないように起き上がると
衣服を身に纏い、マストを利用した階段を上り甲板に出た。

汗ばんだ肌をフワッと、冷たい海風が撫でていく…



「ん〜vv 気持ちイイ〜vv ……え?」



昨夜、崖っぷちに停泊していたはずの船が、広い大海原の真ん中を悠々と進んでいる…
突然の出来事に寝起きの頭がうまく働かず、状況が把握出来ずにうろたえる



「あら…ちょうど今、起こしに行こうと思ってたのよvv」

「 !? 」



突然声を掛けられ驚いて振り返ると、そこにはナミが立っていた。



「 あ…あの… 」

「早速だけど、あなた名前は何て言うの?」

…もしかして、あなた…海賊なの?」

「そうよvv 私はこの船の航海士でナミって言うのvv 宜しくねvv」

「あ…宜しく…って、私がイキナリ乗ってて何でそんなに落ち着いてるの??」

「え? だって、帰って来た時に男部屋を覗いたら
ゾロが大事そうに抱えて寝てるの見たから…そういえば、ゾロは?」

「まだ寝てる…けど…」

「まだ寝てんの〜?? もう…昼御飯無くなっちゃっても知らないわよ?
仕方ないわね…じゃ、アタシが他の奴らを紹介してあげるわvv 一緒に来てvv」



ナミは少し頬を赤らめて目を逸らしたの腕を掴むと、
他のクルー達の居るラウンジへと引っ張って行った。










〜 to be continued 〜