一時間後、ゴーイングメリー号は新しい島に着いた。
「島だぁ〜〜〜っ!! いやっほぅ〜〜〜〜っ!!!」
「ちょっとルフィ! 落ち着きなさい!!」
早く降りたくてウズウズしているルフィを
押さえつけているナミにが話し掛けてきた。
「この島には、どれ位居るの?」
「ん〜…今夜は宿にでも泊まって、明日の昼頃にでも出航しようかと思ってるわ」
「そう…」
予定だけ聞くと、船を降りて一人、街の方へ向かって歩き出した
「ちょっとぉ!! 一緒に宿に泊まらないのぉ!?」
船の上から叫んでいるナミに、振り向きもせず手を振る。
その後ろ姿を甲板から見ているサンジに気付き、
ゾロが口元に意地悪な笑みを浮かべ、声を掛ける。
「何てツラしてやがんだクソコック…あの女に骨抜きにされちまったのか?」
普段ならここで必ず言い争いになる二人だったが
今日はサンジの様子がおかしかった。
ゾロの方をゆっくり振り向くと、何も言い返す事なく
そのままラウンジへと入って行く…
サンジの予想外の反応にゾロは一瞬驚いたが、
何か気付いた事があったのか、そのまま何も言わず
他のクルー達と一緒に船を降りて行った。
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食材の調達を済ませ、他のクルー達と一緒に
宿に泊まる気分になれなかったサンジは船番をかって出、
一人ゴーイングメリー号の見張り台の上で煙草をふかしていた…
昨夜、ココで起きた出来事を思い出しては、
今朝になってに冷たく言い放たれた言葉に胸が締め付けられる…
前日、ゾロが言ったように、
サンジはが女だからよく見ていたと言う訳ではない。
この船のコックであるサンジは
他の者達と違い、に接する機会も多かった。
最初はアレルギーなどがあるといけないと思い、
食べられない物は無いか聞いたり、
甘い物・辛い物・味付けの好みはどうなのかとか、
新しく船に乗って来たに対し、コックとして
それなりに気を使っていただけだった。
しかし、自分が声を掛ける度に向けられる彼女の笑顔に
サンジは次第に胸の鼓動が早くなり、息苦しさを感じるようになった…
いつしか自分が彼女に対し“特別な想い”を
抱き始めている事に気付いたサンジは、正直かなり焦った。
同じ船に乗っている仲間として接するのではなく、
恋愛感情を抱いてしまったとなると少し拙い事になる。
「好きだ」と告白してしまうのは簡単な事だ。
が、結果が良ければまだしも
断られた場合、その後の船上での関係に支障をきたしてくる。
そうなる事が怖くて、自分が思い抱いていた気持ちを伝える事もなく
他の仲間と同じようにに接してきた。
昨夜……確かには酔っていた。
しかし自分に向けられる眼差しや、髪や肌に触れる手の感触は、
サンジを包むように、とても優しく温かかった。
だからこそ、も自分の事を想ってくれているのだと、
これから先の航海を、共に楽しく過ごしていけるのだと思った。
しかし、こうなってしまった今、
に対し今後どう接すれば良いのかも、
二人の間に何事もなかったかのように振舞えるのかどうかも判らず
迫り来る不安に押し潰されそうになっていた…
「はは…カッコ悪ィな俺……」
チリチリと音を立てながら短くなっていく煙草を咥えたまま
見張り台から見えるドス黒い海を眺めるサンジ…
港の明かりが一つ一つ消えてゆき、
辺りが漆黒の闇に包まれる頃、
静まり返った船上に、ギシギシと縄ばしごの軋む音が聞こえ
甲板に人の降り立つ音が聞こえた。
「……俺の機嫌の悪ィ時に……哀れな奴……」
煙草を踏み消し、スルスルと見張り台から降りると、
足音がする方へと向かう…
甲板の上を移動する黒い影を見つけると
苛立ちをぶつけるかのように、罵声を浴びせるサンジ。
「おいクソヤロー! 今日の俺はスッゲェ虫の居所が悪ィんだ…
可哀相だが…手加減無しで行かせて貰うぜ!!」
「!!」
サンジの荒々しい罵声に驚いた黒い影が立ち止まる…
その時、雲の隙間から差し込んだ月明かりに照らし出された影を見て
サンジは息を呑み、愕然とした。
そこには深紅の血に染まったが立っていた。
「な……ちゃん…どうしたんだ!? その格好……」
「ふふっ…何を言ってるの? これが私の仕事…」
ポタポタと血の滴る腕を舐め、冷たい瞳で薄笑いを浮かべるに
サンジはその場から動く事も出来ず、ただ呆然と立ち尽くす…
そんなサンジの姿をどこか悲しげな表情で見ながら
はコツコツと靴音を響かせ歩き出した。
「…こんな女なの…ゴメンね…」
すれ違いざま、消え入りそうな小さな声で呟き、目の前を通り過ぎる…
ハッと我に返ったサンジが、の腕を引き寄せ抱き締める。
「今の…どういう意味?…俺、昨日の事で
ちゃんに嫌われたんだとばかり思ってたんだけど…」
「…襲われたのに何故、嫌われるの?…おかしなコね…」
クスッと笑い、サンジの腕から離れようとするを
力を入れ、より一層強く抱き締めるサンジ。
「じゃぁ何で今朝あんな事を……」
「…貴方の…為……」
「 !! ちゃん!?」
サンジの腕の中で突然意識を失い崩れ落ちる。
慌てて抱きかかえるサンジの指先に、ヌルリと生暖かい感触が走る…
暗くて気付かなかったが、よく見るとの腕には
斬りつけられた傷跡があり、その傷口からポタポタと血が滴り落ちている。
「……なっ……」
痛々しい傷口にショックを受けながらも
を抱え上げ、ラウンジに入りソファに寝かせるサンジ。
とりあえず止血はしたが、専門的な事がまったく判らないサンジは
医者であるチョッパーを呼ぶ為ゴーイングメリー号から飛び降り、
暗闇の中、街中に向かって駆け出していった…
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〜 to be continued 〜